第24回定期演奏会


プログラムノート


越沢 滋

 1996年に活動を開始し、来年夏に創立10周年を迎えるガーデンプレイスクワイヤにとって、20世紀の作曲家による合唱曲は非常に重要なレパートリーです。なかでもフランシス・プーランクとフランク・マルタンの二人の作曲家は、しばしば取り上げており、団員の中にも熱烈なファンが多くいます。

 「アッシジの聖フランチェスコの4つの小さな祈り」(プーランク 1948年)

 アッシジのフランチェスコ(伊:Francesco d'Assisi、本名 Giovanni di Bernardone、1181年或は1182年-1226年)
 清貧をといた中世イタリアの最も誉れ高い聖人で、フランシスコ会の創設者として知られる。ちなみに、フランチェスコとは「フランス風」の意味。

 普段我々は男だけで歌うということをあまりしないのですが、今夜のステージはいきなり男声合唱からスタートです。微妙なハーモニーの美しさをどれだけ表現できるか。第1曲のSalutの響き。さえない中年男性の集まりですが、音楽だけは妖しい男の色気を漂わしたい。

 無伴奏二重合唱のための「ミサ」(マルタン1922~26年)

 GPCが過去演奏した曲目の中で、団員にとって一番の人気がマルタンの「二重合唱のためのミサ」です。第9回演奏会以来、6年ぶり2回目の登場となります。
 聖と俗、古いものと新しいもの、感情と理性、さまざまな要素がごった煮状態になっている曲です。GPCの6年間の成長がお見せできればよいのですが、単なるリターンマッチという説もあります。

 フランク・マルタン Frank Martin (1890-1974)
 スイスの作曲家。1890年9月15日ジュネーブ生まれ。
 はじめバッハに傾倒したのち、アンセルメから印象主義の影響を受ける。シェーンベルクやオネゲルらの新しい音楽傾向に触れたのちには、次第に無調や十二音技法を導入。第二次世界大戦前後のスイス楽壇の中心的な存在。
 ドイツ音楽の持つ堅牢な様式美の上に、近現代の書法を織り交ぜた、独自の思索的で叙情的な作風が特徴。

 「小さな声」(プーランク 1936年)

 プーランクが友人たちの子供に捧げた可愛らしい作品。

   お利口な女の子
   迷子の犬
   学校からの帰り道
   病気の男の子
   はりねずみ

 今夜の子供たちは、たぶん平均年齢30歳はゆうに超えていると思う...

 ソプラノ独唱、混声合唱、オーケストラのための「グローリア」(プーランク 1959年)

 ボストンのクーセヴィッキ財団の委嘱により作曲され、初演はミュンシュ指揮のボストン交響楽団。テキストはカトリックのミサの典礼文のひとつである「グローリア」を分割して用いる。ソプラノ独唱、混声合唱、3管編成のオーケストラのために書かれた、プーランク最後の宗教曲。
 本日はプーランクオリジナルのピアノ伴奏版で演奏します。

 真面目でない、というと語弊がありますが、堅苦しくない音楽を愛しているGPCにしてみれば、プーランクのグローリアは実にふさわしい曲であります。宗教曲でありながら、映画音楽のような甘く切ないフレーズも出てきますし、ゴジラがのし歩くさまを想像させるところや、妙に能天気な踊りのシーンもあります。はじめて聴いたときは「変な音楽」と腰が引けるのですが、気がつくと「Laudamus te」のフシが頭の中で一日中鳴り続けている、そんな曲です。

 フランシス・プーランク Francis Poulenc (1899-1963)
 フランスの作曲家。軽妙洒脱で親しみやすい作風で知られ、「メロディーを持つ20世紀最後の作曲家」「フランス版シューベルト」と評されることもある。代々カトリック教徒のパリの裕福な家庭に生まれる。ジャン・コクトー、エリック・サティを支持するオーリック、ミヨー、タイユフュール、デュレー、オネゲル(フランス6人組)らとともに、フランス古典音楽への回帰と、ドイツ・ロマン主義の放棄などを標榜する。
 プーランクが宗教作品に手を染めるようになったのは、1936年にわずか36才で夭逝した、親友でありよきライバルであったピエール・フェルーの事故死がきっかけだったとも、当時フランコ政権のファシズムが引き起こした内戦で荒れるスペインへの憂慮だったとも言われている。